24)土砂非付着型バケットの開発に関する研究
23)打設型繊維質固化処理土工法の開発と処理土の強度特性に関する研究
22)繊維質固化処理土工法による連続式泥土処理機械の開発に関する研究
21)津波堆積土砂の築堤材への再資源化に関する研究

20)災害現場におけるドローンを用いた土砂サンプリングに関する基礎的研究
19)災害現場における地盤強度の無人自動計測に関する基礎的研究(ドローン)
18)バケット掘削における破砕堆積物の粒度の影響に関する研究
17)海底面掘削機械開発のための基礎的研究-水中車輛の沈下特性について-
16)中間に履帯を有する車輪式移動車両の走行特性に関する研究
15)災害現場における連続式泥土再資源化処理機械の開発に関する基礎的研究
14)表層地盤における強度定数の原位置推定に関する研究
13)油圧ショベルの掘削作業による地盤強度評価に関する研究
12)砕石脱水ケーキと廃石膏を用いた球形骨材の作製に関する研究
11)地盤掘削時の抵抗力に及ぼす礫混入の影響に関する研究
10)土粒子と材料表面の付着に関する研究
9)津波堆積物の再資源化による機能性地盤材料の開発に関する研究
8)津波堆積物を用いた放射能汚染掘削土壌覆土材の開発と耐侵食性評価
7)土と固体材料の付着特性に及ぼす材料表面形状の影響に関する研究
6)パワーショベルによる土砂災害復旧工事における障害物検知に関する研究
5)地盤破壊挙動を考慮した平刃掘削における掘削抵抗力の推定に関する研究

4)小口径無排土掘進機械の屈曲機構に関する研究
3)海底面掘削機械開発のための基礎的研究-水中における土質定数について-
2)低回転・低周速領域における鉄筋コンクリートの効率的切断に関する基礎的研究
1)津波堆積物を用いた放射能汚染土覆土材の降雨耐久性評価と覆土内の雨水流動解析

土砂非付着型バケットの開発に関する研究
これは10)の研究の発展形になります.10)の研究より,バケット表面(材料表面)に最も土砂が付着しやすい含水比が存在すること,またこの含水比は液性限界に近いことが分かりました.そこで,作業対象の土砂の含水比が液性限界に近い状態の場合,土砂の含水比を液性限界から減少させるあるいは増加させれば土砂が付着し難くなると考えられます.含水比を減少させるのは困難であることから,本研究ではバケット表面から水を浸み出させ,バケット表面に水膜を形成させる(局所的に土砂の含水比を高くする)ことにより,土砂の付着を軽減させることにしました.この方法を検証するため,写真に示すような小孔の空いた部品を作成し,ここから水を浸み出させ,付着量・付着力の軽減が可能かどうか実験的に検証しました.その結果,ある程度以上の水を供給すれば,付着量・付着力は大きく減少することが確認されました.
材料表面から水を浸み出させることにより付着量を低減低減

打設型繊維質固化処理土工法の開発と処理土の強度特性に関する研究

土砂に加水してセメントを添加し,まだ固まらない状態で流し込んで裏込めや充填を行う方法が流動化処理土工法です.この方法は施工が容易であり,締固めを必要としないことから,幅広く用いられております.一方,この方法で生成される土砂,すなわち流動化処理土は固くて脆く,かつ乾湿繰返しに対する耐久性が低いという欠点があります.これに対し,本研究室で開発している繊維質固化処理土は,破壊強度・破壊ひずみともに大きくて粘り強く,乾湿繰返しに対する耐久性も高いという長所を有します.そこで,両工法の利点を持ち合わせた工法を開発し,処理土の強度特性を調べようとしたのが本研究です.任意の土砂に対して,流動性,材料分離抵抗性,破壊強度および破壊ひずみの4つを満足する配合条件を決定するフローチャートを開発しました.また本工法で生成される土砂は,乾湿繰返しのサイクル数とともに破壊強度は減少しますが,従来の流動化処理土よりも大幅に耐久性を向上させることができることを確認しました.
フロー試験の様子(目標値は直径100㎜以上)

繊維質固化処理土工法による連続式泥土処理機械の開発に関する研究
これは15)の研究の発展形になります.従来の繊維質固化処理土工法は,水槽に泥土を貯め改良を行う,いわゆるバッチ式であり,大量の泥土を処理するには時間がかかります.一方,災害現場で発生する軟弱泥土を改良し,重機のアクセス道路や復旧のためのストックヤードなどに再利用するためには,迅速な処理が望まれます.そこで,本研究室では,繊維質固化処理土工法を連続的に施工できる機械要素の開発を行っています.古紙破砕物を綿状に粉砕しておき,セメント系固化材を予め混合しておき,固化材入り古紙破砕物を機械の前面の泥土に供給し,撹拌・混合を行い,さらに機械の自重で締固めて行く方法を提案し,モデル実験によりその有効性を検証しています.写真は,このコンセプトに従って作成した連続式泥土処理機械の模型を示しています.
連続式泥土処理機械の模型


津波堆積土砂の築堤材への再資源化に関する研究
本研究室では,未利用高含水比泥土の再資源化を目指して,泥土に古紙破砕物とセメント系固化材を用いて良質な地盤材料に再資源化する「繊維質固化処理土工法に関する研究を行っていますが,その一環として津波堆積物を築堤材に改良するための研究も進めています.現在,陸上の津波堆積物は,そのほとんどが処理済ですが,河川底部に堆積した土砂の処理はまだ不十分です.本研究では,河川底部の津波堆積土砂に繊維質固化処理土工法を適用することにより,築堤材としての性能を満足する地盤材料を生成できることが確かめられました.再資源化のためのフローチャートを作成しておりますが,現時点では,適用できる土砂の範囲が限定されています.任意の未利用土砂に対しても,このフローチャートが適用できるように拡張するするための研究を継続中です.
高城川浚渫土砂改良の様子

災害現場におけるドローンを用いた土砂サンプリングに関する基礎的研究
研究の背景は,下記テーマと同様です.本研究では,主として土砂サンプリングに注目しました.本研究では,ドローンに筒状の土砂採取装置を装着し,上空から土砂採取装置を落下させ,地面に突き刺し,装置内部の土砂を採取する機構を提案し,土砂採取実験を行っています.実験を通して本装置の有効性が確認されました.今後は,装置の姿勢制御・速度制御などの研究を継続する予定です
土砂に突き刺さった装置

災害現場における地盤強度の無人自動計測に関する基礎的研究(ドローン)
我が国では,近年,火山災害や大雨・暴風雨,地震活動に伴って多くの自然災害が発生しています.例えば2011年3月に発生した東日本大震災,同年8月に発生した台風23号による大規模土砂崩落,2014年3月に発生した御嶽山での火山噴火,同年8月に発生した広島での大雨による大規模土砂災害,2015年9月関東・東北豪雨による鬼怒川の堤防決壊,2016年4月に発生した熊本地震など枚挙に暇がありません.このように年々リスクの高まる大規模地震や頻発する風水害等の災害,人口減少・少子高齢化の進行と言った重要かつ喫緊の課題に対して,近年のICT技術を活用し,効率的な対応を可能とする技術の導入が強く求められています.災害現場の状況把握・形状計測にドローンが有効であることが既に確かめられていますが,災害現場の地盤強度の計測や土砂サンプリングが可能になると,災害復旧に大いに役立ちます.しかし,ドローンを用いた地盤強度計測,土砂サンプリングはまだほとんど検討されていません.
本研究では,ドローンに半球形状の錘を装着し,上空から錘を地面に落下させ,地面に衝突する際の衝撃加速度から地盤強度(コーン指数)を推定する手法について検討しています.衝撃加速度の最大値,最大値に至るまでの時間および最大値から0に戻る時間を用いたコーン指数推定式を提案しました.今後は錘をドローンに実装し,データの収集を行いたいと考えています.

加速度センサー付きの錘

バケット掘削における破砕堆積物の粒度の影響に関する研究
資源開発の現場では,岩盤を発破し,破砕堆積物をパワーショベルで掘削するという作業が行われます.現在,発破で破砕堆積物の粒度は制御できるようになりつつありますが,破砕堆積物の粒度と掘削抵抗力の関係は十分に明らかになっていません.破砕堆積物の粒度が掘削抵抗力に与える影響が明らかになれば,将来的には破砕堆積物の掘削作業の効率改善が見込めます.そこで本研究では,バケット掘削における粒度と掘削抵抗力の関係を実験的に明らかにすることを目的としています.本実験より,メディアン径が増加すると掘削抵抗力の最大値および平均値はともに増加することが分かりました.また曲率係数が増加すると,掘削抵抗力の最大値および平均値は減少する傾向が見られました.しかし,均等係数と掘削抵抗力の最大値および平均値には関係は見られませんでした.
バケットによる砕石の掘削実験

海底面掘削機械開発のための基礎的研究-水中車輛の沈下特性について-

本研究は,3) の研究とリンクしています.海底鉱物資源の開発には重機を海底面に沈め,海上から遠隔操作する必要がありますが,海底面と重機の相互作用はあまり研究されていません.先の研究では,水中下での土質定数(粘着力,内部摩擦角)の測定を行いましたが,海底面上での重機の走行抵抗を予測するためには,沈下量を評価しなければなりません.そこで,本卒業研究では,水中下での沈下特性が陸上の沈下特性とどのように異なるのかを評価する研究を行いました.その結果,大気中と水中とでは圧力と沈下量の関係は同じ傾向にあることが確かめられました.ただし,今回用いた装置はやや小型であり,傾向をつかみ難かったので,大型装置に変更して研究を継続する予定です.

中間に履帯を有する車輪式移動車両の走行特性に関する研究
近年,日本は台風,大雨などによる大規模災害が頻発しています.このような災害現場は軟弱地盤になることが多く,そのため不整地走行に適している履帯式車両が多く用いられています.しかし,履帯式車両は機動性があまり高くなく,公道を走行することが出来ないため,車輪式車両により現場へ搬入されなければならず,効率が悪いのが現状です.この問題を解決するため,機動性が高く,かつ不整地走破性が高い車両の開発が望まれています.
そこで本研究室では,中間に昇降式の履帯機構を有する車輪式移動車両の開発に関する研究を行っています.この車両は公道走行時に車輪のみで走行する一方,不整地では中間の履帯を降ろし,車輪と履帯を併用して走行することにより,公道では車輪式車両と同様の機動性を有し,また不整地でも高い不整地走破性を発揮することが期待されます.しかし,この車両の問題点は,不整地では前輪操舵およびスキッドステア(左右の履帯の速度差を利用した旋回)を併用して旋回を行う手法を採用せざるを得ませんが,この手法はオペレーターが感覚的に操舵を行うのが極めて困難であり,旋回性能が低いという点です.
本研究室では,車輪および履帯と軟弱地盤との相互作用から中間に履帯機構を有する車輪式移動車両の軟弱地盤上の運動方程式を導出し,旋回走行シミュレーションや模型車両を用いた旋回走行実験などを行い,中間に履帯機構を有する車輪式移動車両の旋回性能を理論および実験の両面から検討しています.

下記のビデオをでは,車輪のみだと軟弱地盤上で車輪が空転しますが,履帯を併用すると,同じ軟弱地盤上を走行できる様子が確認できます.


軟弱地盤上を走行する中間に履帯を有する
車輪式移動車両
走行の様子(ビデオ)

災害現場における連続式泥土再資源化処理機械の開発に関する基礎的研究
近年,東日本大震災や度重なる大型台風の襲来など大規模自然災害が多発しています.自然災害では大量の軟弱泥土が発生することが多く,この軟弱泥土が迅速な災害復旧の障害になっているのが現状です.そこで,本研究では,「繊維質固化処理土工法」を基本技術として災害現場で発生する軟弱泥土を原位置で改良する『災害復旧対応型泥土処理システム』を開発し,災害に強い街づくりに貢献することを目的とした研究を進めています.本研究では,主として災害現場における軟弱泥土処理システムの開発を行っています.これまでに撹拌時間と改良土の強度との関係,撹拌羽根の最適形状,改良土の強度に及ぼす転圧の影響などについて検討し,連続式泥土処理機械のシステムを構築するための要素技術について最適解を得ることがでました.今後,1つのシステムにまとめ上げ,連続式泥土処理機械モデルの設計・製作を行って行きたいと考えています.

連続式泥土処理機械のイメージ 撹拌装置による泥土改良

表層地盤における強度定数の原位置推定に関する研究
大規模工事や災害現場における復旧作業などでは,建設機械による自動化施工が注目されています.建設機械が地盤上を走行したり,バケットやブレードなどで地盤を掘削する場合,機械と地盤との相互作用を適切に評価する必要があります.特に自動化施工では,機械自らが地盤との相互作用力を推定できる能力を具備することが求められます.しかし,一般的には地盤強度定数はサンプリング試料による室内試験から求められており,機械に装備可能な強度推定装置は未だ開発されていません.そこで.本研究室では,原位置で測定可能なパラメータを用いた推定モデルを構築するため,コーン貫入試験,ベーンせん断試験,および土圧計を組み合わせた装置を作製し,原位置における強度定数の推定に関する研究を行っています.

本研究で作成した地盤強度定数計測装置
ベーンとコーンを組み合わせた先端部分.中央に丸く見えるのが土圧計

油圧ショベルの掘削作業による地盤強度評価に関する研究
近年の建設施工をめぐる情勢として,熟練者不足,低い労働生産性,多発する自然災害といった問題が挙げられています.これらの問題に対して建設ロボット技術の活用による解決が期待されており,関連技術の開発・実用化が進められています.建設ロボット技術とは,「建設施工・調査の現場で用いられる機械・機器に,何らかの新しいメカニズムや制御・情報処理の機能を付加することにより,作業の支援や,自動化・遠隔制御化を実現し,効率,精度,安全などの性能向上・課題解決を可能にする技術」と定義されています.活用例としては,建設機械を遠隔操作化もしくは自動制御化することで,災害現場や水中など人の立ち入れない地域での施工を可能にするものや,搭載したセンサから得た情報をもとに,ディスプレイ表示や操作補助によりオペレータを支援することで施工の精度や速度の向上を図るといったものがあります.
建設施工において広く用いられているパワーショベルについて,これら建設ロボット技術を有効に活用するには掘削動作の制御性能向上が重要です.しかし,油圧システムの種類によっては,同じレバー操作量でもかかる負荷の大小により油圧シリンダへ流れる油の流量,つまり掘削速度が変化してしまう特性があります.このことから予定動作と実際の動作の間にずれが生じ,正確な制御の妨げとなることがあります.
そこで本研究室では,掘削負荷と地盤強度や土質の関係性を明らかにし,掘削作業時に地盤強度および掘削負荷を推定できる手法の開発を行っています.これにより,フィードバックによるより正確な制御が可能になると考えらます.具体的には,複数の土を対象にパワーショベルを用いて掘削実験を行い,地盤強度とパワーショベルにかかる負荷の関係性について検討しています.

油圧ショベルによる掘削実験の様子 バケット掘削による土砂の破壊の様子

砕石脱水ケーキと廃石膏を用いた球形骨材の作製に関する研究
建設廃棄物として排出されている廃石膏ボードは現在,その大部分が管理型最終処分場にて処理されています.しかし,近年の最終処分場の残余容量の逼迫,それに伴う処分費用の高騰をうけ,処分量の削減が求められています.そこで本研究室では,廃石膏ボードの新たな再資源化方法として,廃石膏ボードを脱水ケーキと混ぜ,球形骨材を作製するための研究を進めています.骨材とはコンクリート原料の一種でありセメントおよび水と練り混ぜる砂,砂利,砕砂,砕石等の材料のことであり,脱水ケーキは骨材を人工的に製造する際に発生する産業廃棄物です.脱水ケーキも現在,その多くが最終処分場にて処理されています.骨材は生コン製造時に大量に必要とされる為,大量の廃石膏ボードと脱水ケーキを再資源化することが可能となります.
本研究では球形骨材としての利用に向けた基礎的研究として作製した球形骨材の絶乾密度,吸水率,安定性試験による質量損失分についてコンクリート用砕石の規準と比較し,点載荷試験によって引張強度を求め,従来の骨材の引張強度と比較することで性能評価を行いました.実験の結果,作製した球形骨材は絶乾密度以外についてはコンクリート用砕石の規準を満たし,点載荷試験によって,直径2cm以下であれば従来の骨材と同程度の強度を持つことがわかり,球形骨材としての利用は廃石膏ボードおよび脱水ケーキの有効な再資源化方法であることが確認されました.


乾燥させた脱水ケーキ 溶融により作成した球形骨材

地盤掘削時の抵抗力に及ぼす礫混入の影響に関する研究
災害復旧の現場では,2次災害の危険性も考えられるため,建設機械の自動化・ロボット化に大きな期待が寄せられています.しかし,建設および資源開発の現場では,作業対象物の土や岩石の形状は複雑であり,作業環境が作業の進展とともに時々刻々と変化するので,建設機械の自動化を実現するためには,機械自らが複雑な作業環境を認識し,時々刻々と変化する作業環境に対応する機能が必要不可欠です.油圧ショベルなどによる掘削作業の自動化を考える場合は,粘着力や内部摩擦角といった土の強度特性と地盤を掘削したときの抵抗力の關係を調べることが重要です.しかし,建設機械の掘削作業とともに地盤の内部状況をリアルタイムに把握する研究はあまり行われていません.一方,地すべりや土砂災害の現場においては様々な粒径の土が存在しているため,大小様々な礫が混ざった土の強度特性を調べることが必要になります.
 そこで本研究室では掘削抵抗力に及ぼす礫混入の影響について調べています.ブレードおよびバケットを模擬した室内掘削実験から礫混じり地盤の掘削抵抗力を測定し,礫混入が地盤掘削時の抵抗力に及ぼす影響について考察しています.また,掘削作業から地盤の見かけの強度特性を推定する方法についての研究を実施しています.


実験装置の概略
掘削後の様子

土粒子と材料表面の付着に関する研究
建設現場や農作業において土の固体表面への付着は作業能率の低下やエネルギーロスを引き起こします.土の付着を軽減する様々な方法が研究されていますが,最適な手段は未だ開発されていません.これまでにも土砂の付着実験を行っていますが,様々な課題が残されています.そこで,最近では土砂の付かない材料表面の開発に先立ち,土砂の付着要因を考察する研究を行っています.この研究では,様々な土砂7種類を用意し,1)粒度,2)含水状態,3)活性度の三つの因子について付着特性に与える影響を考察しています.いくつかの有益な結果が得られていますが,付着のしやすさに影響を与える因子は多岐にわたり,さらに検討する必要があります.

付着実験の様子 土砂付着の様子

津波堆積物の再資源化による機能性地盤材料の開発に関する研究
2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震により,場所によっては波高10m以上の津波が発生し,東北地方沿岸部に大きな被害をもたらしました.この地震と津波被害により膨大ながれきが発生しましたが,2014年3月末でガレキ処理はほぼ終了しております.一方,津波堆積物も大量に生じており,これらを全て埋め立て処分することは不可能に近く,できるだけ有効活用が望まれています.津波堆積物を用いて高機能性(高耐久性,高耐侵食性,難透水性,高耐震性)を有する地盤材料を生成することができれば,津波堆積物の再資源化が進むとともに放射能汚染掘削土壌の安全保管も可能になると考えられます.そこで,本研究室では繊維質固化処理土工法を津波堆積物に適用し,機能性地盤材用に改良するための研究を行っています.本研究では,改良土の破壊強度,破壊ひずみ,乾湿繰返しに対する耐久性,覆土材として使用するための透水性,降雨に対する耐侵食性などについて実験的に検討し,改良土の高機能性を確認しています.

津波堆積物を用いた放射能汚染掘削土壌覆土材の開発と耐侵食性評価

土と固体材料の付着特性に及ぼす材料表面形状の影響に関する研究
建設機械のエネルギー消費量は製品のライフサイクル全体のうち,使用時,中でも特に掘削工事における消費が大半を占めると言われています.その掘削工事において建設機械の作業効率を下げている要因の一つに,土の付着が挙げられます.掘削作業中に,建設機械の掘削部の表面に土が付着することによって,掘削抵抗が増す,掘削量が減少する,土を払うなどの余分な作業が増えるといった負の効果をもたらし建設機械の効率を下げているのが現状です.これまでの研究で土が付着したブレードで地盤を掘削すると30-50%もの余分な掘削力が必要になることがわかっています.この土の付着問題を解決すると建設機械の作業効率が上がり,エネルギー消費量および二酸化炭素排出量を大幅に削減することができると考えられます.
本研究室では土の建設機械表面への付着問題を解決すべく,「土の付かない表面形状の開発」を目指した研究を行っています.土の付かない表面が開発されると,既存の建設機械の掘削部品(例えば,バケットやブレード)を土の付かない表面を持つ部品に変えるだけで建設機械の掘削効率を上げることができます.初期コストも低く,ランニングコストもかかりません.また,掘削部品を変えるだけなので従来の建設機械と同様の信頼性も担保できることから普及性の高い低炭素化技術になると考えられます.さらに,表面形状を変えるだけなので建設機械のみならず農業機械や農具にも応用することができ汎用性も高いと言えます.現時点では,以下のことが明らかになっていますが,まだまだ解決すべき課題が多く,研究を進めています.
①平板は土が付着しやすく,穴のある表面の方が土が付着しにくい.
②表面積が小さいほど土の付着が少ない.
③くぼみに囲まれている最大部分の面積が小さくかつ最大個所が少ないほど土の付着が少ない.


本研究室で所有する付着力測定装置 アクリル板に付着した粘土

パワーショベルによる土砂災害復旧工事における障害物検知に関する研究

地盤破壊挙動を考慮した平刃掘削における掘削抵抗力の推定に関する研究

小口径無排土掘進機械の屈曲機構に関する研究
本研究室では,土壌調査用の小口径無排土掘進機械(モグラロボット)の開発研究を進めています.これまで掘削土砂を如何に排出するかに重点を置いて研究を進めて来ましたが,掘削土砂の排出は非常に困難であることから,発想を転換し,掘進部分をネジ状にして土砂を周囲に押し付け,無排土で掘進する機構を考案し,直線掘削は可能であることを確認しております.そこで,近年では屈曲機構の開発を行っていますが,なかなかうまく行っておりませんでした.ところが,本テーマを担当した4年生が形状記憶合金を用いた屈曲機構を考案し,実際に掘進機を作成するとともに掘削実験を行った結果,土壌中で屈曲できることが確認されました.今後は,地表面からドリル先端を制御する方法について検討したいと考えています.

屈曲の様子のビデオ(上をクリック)


海底面掘削機械開発のための基礎的研究-水中における土質定数について-
2012年6月には海洋機構が排他的経済水域に位置する南鳥島沖の水深5000メートルの海底泥に,鉱床として世界最高濃度のレアアースが埋蔵されていると発表しました.現地でのボーリング調査などから,このレアアース層は海底厚さ2メートル程の薄い粘土層に覆われていると考えられます.現状の回収技術として考えられているのは,地球深部探査船「地球」に搭載されているライザー掘削技術による資源回収法があります.しかし,この技術はボーリング調査に用いられるものであり,鉛直方向の掘削には向いていますが,水平方向の掘削には不向きであり,海底に広く存在している有用資源を掘削回収するためには,海底面でも走行可能な掘削機械の開発が必要不可欠です.しかしながら水中での土の物性値,海底面と機械との相互作用を表すトラフィカビリティは全く解明されていません.
そこで本研究の目的として,土の強度特性である粘着力c,内部摩擦角∅に着目し,この二つの物性値を簡易的に測定することができる一面せん断試験を採用し,水圧が載荷された水中環境で土のこれら2つの物性値を得るために,新しく水中一面せん断試験装置を製作し,この2つの物性値が水中環境ではどのような値に影を示すかを実験的に検討しています.

本研究室で開発した水中一面せん断試験機


低回転・低周速領域における鉄筋コンクリートの効率的切断に関する基礎的研究
社会インフラの整備,特にトンネル工事では一般にシールドマシンが用いられるます.このシールドマシンによる地中掘削において,近年では松杭,古井戸,鋼管,基礎杭などの支障物により,機械の破損やそれによる工期の遅れなどの問題が顕在化しています.その中でも鉄筋コンクリートで作られている基礎杭は掘削が困難であり位置情報が明確であるため,地上からの事前引き抜きや掘削ルートの変更といった対策がとられています.しかし,地上,地下の過密化,工期の問題のため,それらの対策がとれない現状があり,鉄筋コンクリートを切削できるシールド機の開発が必要となっています.鉄筋を切断する技術には,ダイヤモンドカッタのような薄刃の高回転・高速度の切削や,ニブラのように挟み込んで切断という技術はありますが,シールドマシンのような厚刃の低回転・低速度で鉄筋を切断する技術は開発されていません.そこで本研究室では民間と共同で鉄筋コンクリートも切削できるシールドマシンの開発のため,厚刃,低回転でコンクリートと鉄筋を切削できるビット形状について実験的に検討しています.

鉄筋入りコンクリートの切削実験 切削後の様子.鉄筋を切削できているのが分かる

津波堆積物を用いた放射能汚染土覆土材の降雨耐久性評価と覆土内の雨水流動解析