研究概要
 本研究室では,新しい環境地盤工学の展開を目指した研究を行っています.
この研究では,

dot高機能性の屋上緑化用植生基盤材を廃棄物から作成し,屋上緑化を広く普及させて
 ヒートアイランド対策に貢献するとともに,緑による癒しの空間を創造する.
dot切土法面や岩盤面の緑化用生育基盤材を作成し,環境保全・景観修復に寄与する.
dot月面の地盤や氷床を掘削するための新しい掘削技術などについて
 理論および実験の両面から検討し,月資源利用や地球環境の変遷の解明に貢献する.

などを目的とした様々なニューフロンティア研究を展開しています.

【最近の研究テーマ】
●繊維質固化処理土の強度特性・変形特性に関する数値シミュレーション
●浄水発生土を利用した屋上緑化用植生基盤材の開発
●岩盤緑化・チップ利用
●廃棄物の複合利用による高機能性築堤材の開発
●月資源利用のための地盤掘削技術
●次世代型氷床内部探査システム

繊維質固化処理土の強度特性・変形特性に関する
数値シミュレーション
 繊維質固化処理土が高い動的強度を有していることは既に確かめられていますが,耐震性を付加するために必要な古紙破砕物の添加量や実際の振動に対する耐震性など未解明な点も多々あるのが現状です.しかし,耐震性を実験的に検討するのは多大のコストと時間を要することから,本研究室では,繊維質固化処理土の耐震性を計算機上でシミュレートできるモデルを開発しています.モデル開発には,本研究室でも実績がある個別要素法(DEM)を用いています.
なお,本研究は,(社)日本建設機械化協会主催「建設機械と建設施工シンポジウム」の優秀ポスター賞や「地球科学に関する国際シンポジウム2009」のBest Paper Awardを受賞するなど,学術的に高い評価を得ています.

一面せん断試験のシミュレーション

一軸圧縮試験のシミュレーション
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浄水発生土を利用した屋上緑化用植生基盤材の開発
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arrow浄水発生土を繊維質処理土工法で改質し,作成した植生基盤材:フレーク状になっているのが特徴
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arrow仙台市の茂庭浄水場の見学コースに花壇を設置している様子:茂庭浄水場の発生土をゴミとして廃棄するのではなく,花壇の土として再利用することにより,見学に来た小学生に循環型社会を意識させるねらいもあります.
   本研究室では,繊維質物質を用いた高含水比泥土の新しい再資源化工法(繊維質固化処理土工法)について研究していますが,本工法は泥土に脱水を施すことなく良質な土砂に改質する点に特徴があります.換言すると,生成される土砂は大量の水分を含んでいることになり,植生基盤材としても極めて優れている可能性があります. そこで,本研究室では,2005年4月〜2006年3月にかけて(社)国土技術センターの研究助成を受け,本工法の応用として浄水発生土を用いた屋上緑化用植生基盤材の開発を行いました.開発された土砂は非常に軽量で,かつ高い保水力・保肥力を有することから,植生基盤材として有効であることを確認するとともに,研究成果を社会に公開するため,開発した植生基盤材を用いて茂庭浄水場の見学コースに花壇を設置しました. なお,本研究では繊維質処理土工法の応用として植生基盤材を生成したため,処理の過程で添加する古紙破砕物の量は可搬性の観点から決められたものであり,植生土壌としての土壌物理の観点から決めた最適添加率にはなっていません.そこで,現在は植生土壌としての土壌物理の観点から最適添加率を決定し,軽量性,保水性,保肥性,通気性,三相分布など全ての特性を満足する植生基盤材の開発を行っています.
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arrow大分市役所庁舎の屋上緑化の様子

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 左の写真は,大分市役所庁舎における屋上緑化の様子を示しています.白く砂浜のように見える部分に浄水発生土を用いた植生基盤材が使用されています.全体のイメージを砂浜に隣接した草地に見立て,流木を止まり木とした鳥が種子を運び,新しい生命が宿り続けることを表現するとともに,廃棄物から生成した植生基盤材を利用していることから資源の循環をメッセージとして表現しています.

岩盤緑化・チップ利用
 法面緑化において緑化の対象となる切土面(盛土面)では,生育基盤である土壌が存在しない,あるいは生育に不適である場合が多々あります.そのため,緑化に際して様々な方法で客土吹き付けを行います.その材料を生育基盤材といい,耐侵食性,安定性,工法の利便性などが要求されます.本研究室では,民間との共同研究により, 「木材チップとボンテラン土の混合による法面緑化工法」について検討しています.これは,現地で発生する抜根・枝葉・伐採材のチップとリサイクル泥土を有効利用するゼロエミッション型工法です.繊維質改良土の繊維とチップが複雑に絡み合った基盤が生成され,降雨による侵食がほとんど見られないのが特徴です.またチップの長さを30mm以下に粉砕することで,従来のモルタル吹付機での施工が可能であり,大幅なコスト縮減が可能になります. 今後は,砕石場・石灰石鉱山等の残壁の緑化などに取り組みたいと考えています.   2
arrow伐採・抜根材のチップ化状況
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arrow繊維質処理土とチップとの混合
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arrow吹き付けの様子
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廃棄物の複合利用による高機能性築堤材の開発
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arrow平成15年7月に発生した宮城県北部地震による堤防崩壊の様子(宮城県鹿島台町)
国土交通省東北地方整備局北上下流河川事務所パンフレットより
  2006年9月25日付けの読売新聞では,全国の河川堤防の約4割が強度不足で決壊の可能性があり,早急の補強対策工事が必要であることを指摘しています.本研究室が民間と共同で開発した繊維質固化処理土工法により生成される処理土は,破壊ひずみおよび破壊強度が大きく粘り強い性質を示すなど強度特性に優れ,かつ乾湿繰り返しに対する耐久性も極めて大きいことから,堤防の補強盛土として最適であると考えられます.しかしながら,繊維質固化処理土工法では処理の過程で大量の古紙を混合するため,繊維質固化処理土は非常に軽量であるという特徴があります.軽量性を活かす場合,軽量盛土材としての利用が期待されますが,堤防の補強盛土材としては,増水時における浮力の影響などを考えると,軽量性は具合が悪いことになります.そこで,繊維質固化処理土に砕石やスラグなどの質量の大きい物質を混合し,繊維質固化処理土の質量を通常土程度まで増加させる必要がありますが,繊維質固化処理土の有する優れた特性を維持したまま,密度を通常土程度まで増加させるための砕石・スラグの混合割合や強度特性などは全く検討されていないのが現状です. そこで,本研究室では,高含水比泥土,RC骨材,各種スラグなど各種廃棄物を利用して生成した繊維質固化処理土を堤防の補強盛土材へ適用するための処理技術について研究しています.

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月資源利用のための地盤掘削技術
 月面に人類の活動拠点を構築するためには,インフラを整備することが必要不可欠です.しかし,インフラ整備のための資材・エネルギーを地球から運ぶのでは莫大な経費が必要となります.そこで,注目されているのが,月面の資源を利用して,必要な資材・エネルギーを原位置,すなわち月面で作り出そうという月資源利用技術ISRU(In-Situ Resources Utilization)です.ISRUを実施するためには,どのような資源がどこにどの程度存在するかなどを調査するセンシング技術,月面を覆っている土壌であるレゴリスを掘削し,運搬・貯蔵するハンドリング技術,レゴリスから目的とする資材・エネルギーを作り出すプロセッシング技術などが必要になります. 本研究室では,ハンドリンググループに所属し,月面地盤掘削に関する基礎研究などを行っています.この研究では,地盤調査用小口径掘進機械(モグラロボット)の技術が応用されています.

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次世代型氷床内部探査システム
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arrow次世代型氷床内部探査システムの概念図

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  南極の氷はタイムカプセルと言われています.つまり,南極に降り積もった雪は,圧密されて氷に変化する時に,当時の空気を取り込んで氷に変化するため,南極の氷には当時の空気が封じ込まれています.そこで,何らかの方法で南極の氷を取り出し,その氷に含まれている空気を分析することにより,当時の地球環境を知ることができます. 現在の氷床内部の直接的探査は、氷床をボーリングして氷のコアを連続的に採取し,これを分析することにより行われています.氷床コア採取法は,実際にサンプルを観察できる利点があるため,今後も重要な氷床内部調査方法の一つですが,一方で(1)掘削装置が大規模になる,(2)時間と費用がかかる,(3)分析に時間がかかる,などの理由から,氷床データを取得するまでに莫大な時間と費用がかかるという短所があります.そこで,これらの短所を補うために、本研究室では国立極地研究所と共同で氷を融解しながら掘進して融解水を装置内部に採り込んで直ちに自動分析する「次世代型氷床探査システム」を提案しております.本研究では,融解式掘進装置の開発を目指し,氷融解および融解水の再凍結防止のために必要な電力と目的深度到達までに要する時間をなど計算により求め,さらに模擬ソンデを用いて氷融解実験を実施しています.
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EEE Lab. Environmental Studies Tohoku University, Japan.
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