研究概要
 現在,廃棄物問題は避けて通れない大きな社会問題になっています.廃棄物を減らし,再資源化する技術は,持続的発展・循環型社会の構築に対して必要不可欠な技術です.本研究室では,様々な廃棄物を再資源化し,有効利用するための処理技術について,特に土壌改良への適用について研究を行っています.特に各種の廃棄物を有機的に融合し,機能性の高い地盤材料(例えば耐震性地盤材料)の開発を目指しています.

【最近の研究テーマ】
●MRG(Miyagi Recycle Gypsum)工法の開発
●廃石膏ボードを利用した繊維入り半水石膏系固化材の開発
●高含水比泥土の新しい再資源化技術−繊維質固化処理土工法
●廃石膏ボードの新しい再資源化技術−土質改良への適用
●ペーパースラッジの新しい再資源化技術−土質改良への適用
●脱水ケーキを用いた球形骨材生成技術

MRG(Miyagi Recycle Gypsum)工法の開発
(宮城県3R新技術開発事業プロジェクト)
 本プロジェクトは,難処理物質である廃石膏ボードを粉末状に粉砕し,土質改良の事前処理に利活用しようとするものです.土質改良には一般に移動式土質改良機が用いられますが,土砂が粘土質になると処理量が大きく減少してしまうという問題点があります.そこで,事前に含水比調整材を混合しておき,土質改良機による本施工時の処理量減少を抑える工法が考えられます.この含水比調整材に廃石膏粉を利用しようというのが本研究の目的です.実験の結果,廃石膏粉の添加量の増加とともに粘着力が減少し,その結果,処理量が増大することを確認しています.

2台の土質改良機を利用した土質改良の様子(最初の機械で廃石膏粉を混合し,
2台目で生石灰を混合して本施工を実施する)

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廃石膏ボードを利用した繊維入り半水石膏系固化材の開発
(山形県3R推進プロジェクト)
本プロジェクトは,難処理物質である廃石膏ボードを用いて繊維入り半水石膏系固化材を開発し,地盤改良に適用しようとするものです.廃石膏ボードを石膏とボード紙の区別なく粉砕し,電気炉にて焼成することにより,繊維質を保持したまま2水石膏から半水石膏を作成しておりますが,この繊維入り半水石膏を地盤改良に適用するための最大の課題は,硫化水素を発生させないことです.
そこで,本研究室では,硫化水素を発生させない技術開発に取り組んでいます.研究の結果,土壌を弱アルカリに保つことおよび鉄スラグを混入させることにより硫化水素の発生が抑えられることが実験的に確認されました.現在は,硫化水素抑制のメカニズムを生物工学的に考察するとともに,盛土材として使用するために処理土の強度特性・劣化耐久性などについて検討しております.

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実験開始から40日後,液体が黒ずみ硫化水素が発生していることが分かる

40日後も液体は黒ずんでおらず硫化水素の発生が抑制されていることが分かる

硫化水素濃度計測


高含水比泥土の新しい再資源化技術 ー繊維質固化処理土工法
 建設汚泥等の高含水比泥土は含水比が高いために直接の再利用が難しく,ほとんどが産業廃棄物として最終処分場で処理されています.しかし処分場の不足・遠隔化は深刻な問題であり,輸送コストの負担から建設汚泥の不法投棄が後を絶たず,地球環境への汚泥負荷の影響が大きな問題となっています.そのため,建設汚泥および浚渫土等の高含水比泥土を現場で再資源化する技術の確立が切望されています.
 そこで,本研究室では民間企業等と共同で,古紙と泥水を混合し,さらに高分子系改良剤を加えて良質な土砂に蘇らせる工法,すなわち「繊維質固化処理土工法」を開発しました.本工法による処理土は繊維質を含むため,粘り強く破壊ひずみや残留強度が大きいという特徴を有することから,盛土材として最適であり,既に多くの施工実績を有しております.現在は,繊維質固化処理土の耐震性地盤材料としての評価や環境保全への適用などに関する研究を実施しております.
 
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arrow繊維質固化処理土工法を採用した工事現場の様子

仙台市宮城野区小田原から青葉区本町までの一般国道45号線道路下にシールド工法により共同溝を1.37km構築する工事(仙台東部共同溝工事).
シールド掘進機を導入するための立坑を掘削する際に排出される汚泥を繊維質固化処理土工法で全量処理し,4号線バイパス拡幅工事に盛土材として再利用するという完全なゼロエミッションを実現した現場である.

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廃石膏ボードの新しい再資源化技術 ー土質改良への適用
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arrow作成した繊維入り中性固化材
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arrow一軸圧縮試験後の供試体の様子:

繊維質固化処理土と同様に中央部分が膨らむ樽型変形をしています.
   建築物の新築工事・解体工事現場から排出される廃石膏ボードは,「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」の一部を改正する政令により,管理型最終処分場で処理することが義務付けられています.しかし,今後何年も新築工事・解体工事現場から排出される廃石膏ボードの量を受け入れられるだけの容量は現在の管理型最終処分場にはなく,従って,廃石膏ボードの再資源化が急務の課題になってきております.
 本研究室では,半水石膏が二水石膏に変化する際の固化能力の高さに注目し,廃石膏ボードから繊維入り中性固化材の開発を行い,それを土質改良に適用するための研究を行っています.具体的には,繊維質固化処理土工法により確認されている繊維質の効果に注目し,石膏とボール紙を分離することなく破砕し,繊維入り中性固化材を作成するとともに,高含水比泥土を,この繊維入り中性固化材で改質し,改良土の強度特性・変形特性などについて検討しています.
 なお,廃石膏ボードを土壌改良材として利用する場合,硫化水素の発生が懸念されます.そこで,平成19年度より山形県3R推進プロジェクト事業計画に採択された(株)森環境技術研究所と共同で,この硫化水素対策技術を確立するための研究を開始しております.

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ペーパースラッジの新しい再資源化技術 ー土質改良への適用
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arrowペーパースラッジを利用して作成した
土質改良材(PS材)
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arrowPS材を用いると,左図のような軟弱土を右図のように団粒化させ,十分な強度を有する土砂に改良できることを確認しました.またPS材は焼却灰と異なり,焼却による環境負荷がなく,地球環境に優しい改良材であるとともに,短いながらも繊維質を含むため破壊ひずみが大きくなるなど,優れた効果が確認されています.
 上述の繊維質固化処理土は生成される土砂の内部に繊維質を含むため,破壊強度・破壊ひずみが大きくなることが確かめられています.
 ところで,再生紙工場から排出されるペーパースラッジ(以下PS)の大部分は減容化のために焼却処分され,最終処分場で埋立て処理されているのが現状です.しかし,処分場の残存容量は逼迫しており,地球環境に負荷を与えないためにも,PSの有効利用が望まれています.PSには,短いながらも繊維質が含まれており,また上述したように土質改良への繊維質の効果は既に確認されていますので,PSを焼却処分することなく土質改良に適用できれば,PSのリサイクル率向上に大きく寄与できると考えられます.
 そこで本研究室では,PSを焼却することなく加工し,土質改良材(PS材)を開発し,それを土質改良に適用する研究を進めています.改良土の強度・変形特性について検討した結果,PS材はPS焼却灰よりも土質改良の効果が高いことが確認されています.

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脱水ケーキを用いた球形骨材生成技術
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arrow脱水ケーキを利用して生成した球形骨材:

密度,吸水性など骨材としての基準をクリアし,さらに引張強度が砕石骨材と比較してほぼ同程度あるいはやや強度が高く,コンクリートの強度も十分であることを確認しています.
   本研究室では,脱水ケーキの新たな再資源化を目指し,脱水ケーキを利用した高機能性球形骨材の生成手法について実験的に検討しています.具体的には,脱水ケーキを球形状に整形し,電気炉で形状を保ったまま溶融固化させる手法について検討するとともに,さらに脱水ケーキに炭化物を混合させ,軽量骨材を生成するなど,機能性の高い球形骨材を生成する手法について検討しています.その結果,球形を保持したまま脱水ケーキを溶融させる最適温度・時間を把握するとともに,生成された球形骨材が十分な強度を有していることを確認しております.
 現在は,脱水ケーキの内部に微細な気泡を発生させることにより骨材を軽量化し,軽量かつ強度の高い,付加価値のついた高機能性球形骨材の生成を目指した研究を進めています.

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