研究概要
 現在,廃棄物問題は避けて通れない大きな社会問題になっています.廃棄物を減らし,これらを再資源化する技術は,持続的発展・循環型社会の構築に対して必要不可欠な技術です.
本研究室では,資源開発・建設施工のゼロエミッションを目指して,廃棄物を再資源化する機械,すなわち環境対応建機とその知能化(環境知能工学)に関する研究を行っています.

【最近の研究テーマ】
●再生路盤材含有スファルトの高次利活用のための土砂分離装置の開発
●モビールクラッシャーによるコンクリート塊破砕の数値シミュレーション
●土質改良機における土砂攪拌トルクに関する実験的・理論的考察
●土質改良機の処理量に及ぼす土質の影響
●土質改良機における掘削土砂と添加剤の攪拌混合シミュレーション
●土質改良機における土塊の小割りシミュレーション
●建設混合廃材リサイクル処理機械のための分別機能に関する研究
再生路盤材含有スファルトの高次利活用のための土砂分離装置の開発(宮城県3R新技術開発事業プロジェクト)

道路補修工事現場から排出されるアスファルトガラをアスファルト舗装用の再生骨材として利用する場合,初めにグリズリーと呼ばれる大型の篩にかけられ,グリズリーオーバー材は破砕工程に入り,再生骨材として再利用されますが,グリズリーアンダー材は,アスファルト含有骨材が多く含まれているものの,全体の土砂分は5%以下であるという法的基準をクリアーしていないため,付加価値の低い路盤材にしか活用されていないのが現状です.
そこで,本研究室では前田道路(株)と共同で,グリズリーアンダー材の高度利活用を目指し,グリズリーアンダー材の土砂分を5%以下に削減させる装置を開発しています.この装置は,自然落下式に旋回流を付加した土砂分離装置であり,試験の結果,グリズリーアンダー材を本装置に通すと,土砂分が5%以下に削減されることが確認されました.現在,実プラントにおいて検証実験を行うため,大型装置の設計を行っており,2011年度に検証実験を行う予定です.

縦貫道~1.JPG
アスファルト廃材


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自然落下方式と旋回流を利用した土砂分離装置
モービルクラッシャーによるコンクリート塊破砕の
数値シミュレーション
  モービルクラッシャーは,現場循環型工法に大きく貢献する環境対応建機ですが,破砕に関するパラメータは多く,それぞれのパラメータが破砕に寄与する割合は明らかではありません.その割合を把握できれば,効率的な機械の設計や現場での施工に貢献できると考えられます.
そこで,本研究室では,個別要素法(DEM)を用いてモービルクラッシャーの破砕性能を推定し得る数値シミュレータを開発し,破砕に及ぼすパラメータの影響について数値実験を実施しております.2次元モデルは既に開発済みですが,実際の現象をより詳細にシミュレートするため,現在,モデルを3次元に拡張中です.

モービルクラッシャーZR950JC(日立建機(株))


破砕のシミュレーション結果
(3次元:現在開発中)

破砕のシミュレーション結果
画像をクリックするとムービーが開始されます
(avi,1.5MB) 縦横比が実際と多少異なっています

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土質改良機における土砂攪拌トルクに関する実験的考察
 自走式土質改良機を用いる施工現場では,土砂と添加剤(セメント系固化材や生石灰など)を如何に均一に混合するかが極めて重要であることから,土砂と添加剤の混合性能に及ぼす機械要素や土質の影響に関する研究は既にいくつか行われています.しかしながら,土砂と添加剤を攪・混合する時の攪拌トルクについては,未だ十分には解明されていないのが現状です.自走式土質改良機に搭載できる動力は限られていることから,土砂の土質条件によっては,あるいは一度に大量の土砂を機械に投入するなどと言った工事のやり方によっては,土砂と添加剤が十分に攪拌・混合されないという事態も発生してきています.土砂の状態に応じた攪拌トルクを理論的に求めることができれば,均一な攪拌・混合という条件を満足し,かつ最大の土砂投入量を決定することができ,最適施工や機械の最適設計などが可能になると考えられます.
 そこで,本研究室では,自走式土質改良機の攪拌トルクを算出するための物理モデルを導出し,土砂の攪拌・混合実験を通して,モデルの妥当性を検証する研究を行っています.

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土質改良機の処理量に及ぼす土質の影響
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arrow土質・含水比によっては,機械の処理能力以上の土砂が投入されると,図のように排出が間に合わずに土砂が溢れ,効果的な改良が難しい状態になります.
実験装置の概略
 土質改良機による作業では,土砂は油圧ショベルなどにより土砂フィーダに供給され,そこから攪拌部に投入されます.攪拌部に投入された土砂はパドルによって添加剤(セメント系固化材や生石灰など)と攪拌混合され,ベルトコンベアによって排出されます.パドルミキサによって単位時間に処理できる量は実験的に求められていますが,この量は土質の影響を大きく受け,土質によってはパドルミキサの処理能力以上の土が投入されると装置の破損を引き起こしたり,逆に性能を十分発揮できない条件で装置を稼動させていることもあるのが現状です.すなわち,処理能力を理論的に求め,投入する土質の種類や含水比によって最適な条件を設定することができれば作業の効率化が期待できるとともに,投入される土質の影響を機械が自動的に判断し,最適な操業条件になるように自らを制御するような知能化が期待できます.
 そこで本研究室では,土質改良機の処理量・攪拌トルクと土質の関係について理論的・実験的に検討し,最適操業条件の把握を目的として研究を行っています.

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土質改良機における掘削土砂と添加剤の攪拌混合シミュレーション
 土質改良機が行う作業の目的は,セメント系固化材や生石灰などの添加剤と掘削土砂とを均質に混合することですが,この機械の最適設計を行う場合,例えばパドルの取り付け角度,ピッチ,回転数などの機械要素の他に土質条件など土砂の混合に関与すると考えられるパラメータは非常に多く,それらを全て実験によって評価・検討するのは非効率的であるばかりでなく,あまりにも非経済的です.これに対し,コンピュータ上で土砂の混合過程をシミュレートすることができれば,コンピュータ上で土質改良機の最適設計を行うことが可能になります.土砂の混合装置に関しては,建設機械メーカなどにより独自に研究開発が進められつつありますが,混合状態は定量評価が難しいことから,各メーカが独自にノウハウを蓄積している状況であり,発表されているデータは少なく,土砂と添加剤の混合過程の数値計算例はほとんど見受けられないのが現状です.
 そこで本研究室では,処理機械の効率的かつ経済的な設計を可能にするため,コンピュータ上で混合容器内における土砂挙動を解析するためのシミュレータの開発を行っております.シミュレータは粒状体の挙動解析に広く用いられている個別要素法(DEM)を用いています.

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arrowシミュレーション結果の一例:

黄色の要素は掘削土砂を,赤の要素は攪拌混合部分にある添加剤を,また緑の要素はフィーダーから供給された添加剤を示しています.水色の部分はパドルとシャフトを示しています.
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arrowシミュレーション結果の一例
土質改良機における土塊の小割りシミュレーション
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arrow粘性土塊小割りのシミュレーション結果
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arrow10cm角の土塊を小割りした時の小片の一例
 汚染土壌を掘削処理により効率的に修復するためには,土砂と改良のための薬剤をできるだけ均一に混合することが非常に重要です.粘性の高い土壌や汚染された土壌に生石灰や薬剤を添加して混合・攪拌を行う場合,如何に土砂を細かく解砕し,添加剤を広く均等に混合させることができるかが鍵となります.しかしながら,土質改良機内において粘性土がどのように小割りされていくかを理論的に取り扱った研究はほとんど見受けられません.
 そこで本研究室では,土砂の小割過程をコンピュータ上で実現できるシミュレータを開発することを目的とした研究を行っています.このシミュレータにより,土質改良機の最適設計および最適操業条件の把握が可能になると考えられます.本研究では,土質改良機混合容器を摸擬した実験装置で粘性土の小割実験を行い,その過程を再現するためのシミュレータについて検討しています.また,シミュレーションによって得られた粒子挙動データから土砂粒子の小割りの程度を定量的に評価する土砂粒径分布の算出方法についても検討しています.

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建設混合廃材リサイクル処理機械のための分別機能に関する研究
 建物の解体工事によって排出される建設混合廃材には将来的に再資源として利用できる角材,木屑,コンクリート塊などが多く含まれています.そのため,現在,分別解体が推奨されているものの,古い家屋は分別解体に適した建築構造になっておらず,建設混合廃材の処理費削減から,古い家屋の解体工事現場では,建物を材料の区別なく重機で一度に取り壊す「ミンチ解体」が多々見られるのが現状です.その結果,現場には様々な種類の建設混合廃材が混在し,それらの分別作業に多くの人手と時間を要しています.そのため,建設混合廃材のリサイクル率が向上しないばかりでなく,廃材の不法投棄や野外焼却といった不正処理が増加し,社会問題にもなっています.それゆえ,分別作業の現場では自動化・ロボット化により廃材の自動選別を行う建設混合廃材リサイクル処理機械の開発が望まれています.今後,このようなリサイクル処理機械の開発が実現すれば,建設混合廃材のリサイクル率が向上し,新たな資源の採取の抑制,廃棄物の発生抑制,資源の循環的利用が促進されると考えられる.さらに,天然資源の消費をできるだけ節約し,環境への負荷をできる限り少なくする資源循環型社会に貢献できるものであると考えられます.
 本研究室では,分別作業の無人化・自動化を実現するための基礎的研究として,排出された混合廃材の中でも抽出が容易で再生利用価値の高い角材および最終処分場で混入の嫌う木材の分別機能について研究しております.具体的には,機械に搭載した視覚センサにより廃材の山を撮影し,画像処理により木材部分を抽出し,その部分の位置計測を行い,ハンドで掴み,材料をハンマーで打撃した時の打撃音を解析することにより,材質を判断させるアルゴリズムを開発しています.

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arrow建設混合廃材リサイクル処理機械:

視覚センサと聴覚センサにより混合廃材から木材のみを分別します.
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arrowマイクロホンを設置したハンド:

ハンマーで材料を打撃し,その打撃音を解析することにより,ハンドで掴んだ材料の材質を判断する.
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