津波堆積物の再資源化による人工地盤造成
気仙沼市終末処分場隣接地における試験施工



津波堆積物の性状は地域によって大きく異なるので,宮城県北部地域における津波堆積物を再資源化し,人工地盤を造成する一連の施工を確認するため,気仙沼市役所に協力をお願いしました.協議の結果,市内の終末処分場に堆積している津波堆積物を使用し,隣接地の地盤沈下した箇所の嵩上げに再利用することになったため,津波堆積物に繊維質固化処理土工法(ボンテラン工法)を適用し,嵩上げのための人工地盤を造成する試験施工を2011年10月30日から11月3日に実施しました.

室内試験
本現場の津波堆積物の特徴は,図-1に示すように大量の木材チップが含まれていることです.私どもの研究室では,通常の繊維質固化処理土に比べて,木材チップ入り繊維質固化処理土は強度が増加するという結果を得ていましたので,本施工現場では,図-1に示す木材チップ含有の津波堆積物をそのまま使用することにしました.
室内試験の目的は,試験施工の際の古紙破砕物およびセメント系固化材の配合量を決定することです.改良土の強度および破壊ひずみについて改良目標を,強度100kN/m2以上,破壊ひずみ5%以上と設定しました.津波堆積物は含水比がやや低いため,30%になるように加水調整し,室内試験を実施しました.室内試験の結果より,これらの目標値を満足する添加量として,古紙破砕物25kg/m3,セメント系固化材50kg/m3と決定しました.

図-1 大量の木材チップを含有した津波堆積物 図-2 津波堆積物の加水調整


試験施工概要
試験施工では,津波堆積物を所定の量(約14.5m3)だけ水槽に投入し,含水比が30%になるように加水調整しました.図-2は津波堆積物と水を混合している様子です.その後,25kg/m3の添加量になるように古紙破砕物を投入し,津波堆積物と混合しました.さらにセメント系固化材を加え,撹拌・混合を行い,一連の作業を確認しました.図-3および図-4に古紙破砕物およびセメント系固化材の添加・混合の様子を示します.再資源化した津波堆積物の量は約100m3です.

図-3 古紙破砕物の添加・混合 図-4 セメント系固化材の添加・混合

一連の撹拌・混合を終えた後,ショベルにより改良土を水槽から取り出し,バケットの底面およびショベルによる転圧を行い(図-5),地盤の嵩上げを行いました.造成した人工地盤を図-6に示します.今回使用した津波堆積物のチップ含有量は45%とかなり高めでしたので,全体的に弾力のある地盤となりました.今後は室内実験により最適なチップ混合量を把握し,より効果的な人工地盤造成に貢献して行きたいと考えています.

図-5 ショベルによる改良土の転圧
図-6 地盤沈下箇所を嵩上げするために造成した人工地盤

本施工は,三井物産環境基金「東日本大震災復興活動助成」によって実施されたことを付記し,謝意を表します.

また本施工は,下記のメディアに取り上げて頂きました.お礼申し上げます.
宮城テレビ ミヤギnews every
テレビ朝日モーニングバード (アカデミ・ヨシズミ) 2012年3月5日放送