津波堆積物の再資源化による人工地盤造成
名取市広浦湾の津波堆積物の再資源化に関する試験施工



名取市は仙台市の南に位置し,東は太平洋に面しています.仙台市との境には閖上浜が広がり,そのすぐ脇に広浦湾があり,そこから岩沼市まで貞山堀が延びていいます.2011年3月11日の巨大地震により発生した大津波は,この広浦湾を横切る形で名取市内陸部まで押し寄せ,海岸から約3〜4kmの位置にある仙台東部道路で停止しました.2012年9月の時点で,発生したガレキはほとんど選別所に集積され,選別作業が行われていましたが,広浦湾や貞山堀の底部に堆積した津波堆積物に対しては,これから本格的に浚渫作業が始まり,処理が行われる状況でした.そこで,名取市役所と協議を行い,名取市閖上の広浦湾底部に堆積した津波堆積物の一部を浚渫し,繊維質固化処理土工法(ボンテラン工法)を適用して津波堆積物を再資源化する試験施工を2012年9月27日および28日に実施しました.

室内試験
室内試験の目的は,試験施工の際の古紙破砕物およびセメント系固化材の配合量を決定することです.配合量決定のための室内試験は一軸圧縮試験とし,改良土の強度および破壊ひずみについて改良目標を,一軸圧縮強度123kN/m2以上,破壊ひずみ5%以上と設定しました.
試験施工に先立ち,広浦湾で津波堆積物のサンプリングを行いました.室内試験の結果より,目標値を満足する添加量として,古紙破砕物25kg/m3,セメント系固化材60kg/m3と決定しました.またサンプリングした津波堆積物に対して土壌環境分析を行った結果,土壌環境基準全27項目に対して基準値をクリアすることが確認されました.


試験施工概要
これまでの試験施工では,現場に撹拌用の水槽を設置し,水槽の中に津波堆積物を投入して再資源化処理を施しましたが,今回の試験施工では,広浦湾の水位が低くなる時期にパワーショベルで津波堆積物の浚渫するため,地面を掘削して撹拌用の土砂ピットを作成しました.図-1はパワーショベルで浚渫した津波堆積物をクローラダンプで運搬している様子を示しており,図-2は津波堆積物を土砂ピットに投入している様子を示しています.

図-1クローラダンプによる浚渫土の運搬
図-2土砂ピットへの浚渫土の投入

試験施工では,図-3に示すように土砂ピットに投入した改良対象土に対して,25kg/m3の添加量になるように古紙破砕物を添加し,攪拌・混合を行いました.攪拌終了後に固化材を混合しますが,今回の試験施工では図-4に示す土質改良機を使用しました.土質改良機上部のホッパーに固化材を入れ,室内実験で決定した添加量(60kg/m3)になるように供給量をセットし,撹拌・混合を行いました.古紙破砕物が混合された津波堆積物はパワーショベルにより土質改良機のフィーダーに投入され,機械内部で固化材と混合され,ベルトコンベアを介して外部に排出させました.

図-3 古紙破砕物と浚渫土の混合
図-4 土質改良機による固化材の混合

改良土は,耐震性地盤材料としてすぐに活用可能ですが,名取市役所と協議の結果,試験施工場所に一旦仮置きし,後日再利用することになりました.図-5は改良土をパワーショベルで転圧している様子を示しており,また図-6は造成された盛土を示しています.盛土の大きさは,底面が14m×8.4m,上面が10m×5.6m,高さ1.25mであり,盛土体積は約110m3でした.施工終了後7日目にコーン貫入試験を行い,造成した地盤強度を計測しました.5cm,7.5cmおよび10cmの貫入深さにおける値の平均を求めた結果,コーン指数は3,1381kN/m2以上でした.これは一軸圧縮強度に換算すると314kN/m2以上となり,目標値である123kN/m2以上を満足することが確かめられました.

図-5 ショベルによる改良土の転圧
図-6造成した人工地盤


本施工は,東北建設協会「技術開発支援<東日本大震災関連>」により実施したことを付記し,謝意を表します.