津波堆積物の再資源化による人工地盤造成
大船渡市綾里地区における被災農地土の再資源化



大船渡市では,津波の引き波により市街地の津波堆積物はほとんど排出されており,津波堆積物が市街地に大量に堆積しているという状態ではありませんでした.一方,市内の農地の多くは津波を被り,津波堆積物が農地を覆う被害が発生しました.震災から1年4ヶ月が経過した2012年7月の時点で,発生したガレキはほとんど二次選別所に集積され,選別作業が行われていましたが,農地の再生を目指した津波堆積物の除去作業は,これから本格的に行われる状況でした.そこで,大船渡市役所と協議を行い,農地に堆積した津波堆積物に繊維質固化処理土工法(ボンテラン工法)を適用し,再資源化する試験施工を2012年7月28日から8月2日の工期で実施しました.

室内試験
室内試験の目的は,試験施工の際の古紙破砕物およびセメント系固化材の配合量を決定することです.配合量決定のための室内試験は,岩手県が発行している復興資材活用マニュアルに基づきコーン貫入試験とし,改良土の目標コーン指数を1,000kN/m2以上に設定しました.
採取した改良対象土は含水比が26.6%と乾燥が進んでいたものの,震災前には圃場であり,降雨後には泥濘化することが予想されました.そこで近隣の湿潤状態の農地土を追加採取して含水比を測定したところ,含水比は62%程度であったため,試験の再現性を考慮し,試験用試料は加水により含水比を65%に調整して行うことにしました.室内試験の結果より,目標値を満足する添加量として,古紙破砕物25kg/m3,セメント系固化材92kg/m3と決定しました.

試験施工概要
図-1に大船渡市南三陸綾里地区における津波堆積物の掘削の様子を示します.約15cmの厚さで津波堆積物と水田土壌の表層部を剥ぎ取り,このうちの約150m3が市内の二次選別所に搬入されました.図-2に改良対象土(原泥)を示します.改良対象土には木くず,稲わら,雑草などの他に大きな木片,アルミ棒,電気コード,プラスチック片など様々なガレキも混入していましたが,大きなガレキ類は改良前に手作業で分別しました.

図-1津波堆積物掘削の様子
図-2改良対象土(原泥)

その後,水槽に所定量(10m3)の改良対象土を投入し,室内試験と含水比を合わせるために加水し,含水比を65%になるように調整しました.次に投入した改良対象土に対して,25kg/m3の添加量になるように古紙破砕物を添加し,攪拌・混合を行いました.図-3に古紙破砕物を攪拌・混合している様子を示します.古紙破砕物と津波堆積物がほぼ均一に攪拌・混合された後,室内実験で決定した添加量(92kg/m3)になるように,高有機質土用セメント系固化材を添加しました(図-4).

図-3 古紙破砕物の添加・混合
図-4 セメント系固化材の添加・混合

改良土はパワーショベルにより水槽から取り出され,水槽の脇に仮置きすることにしました.図-5は改良土をパワーショベルで転圧している様子を,また図-6は造成された盛土を示します.施工終了後3日目にコーン貫入試験を行い,造成した地盤の強度を計測しました.5cm,7.5cmおよび10cmの貫入深さにおける値の平均を求めた結果,コーン指数は1,632kN/m2であり,目標値である1,000kN/m2以上を満足することが確かめられました.

図-5 ショベルによる改良土の転圧
図-6造成した人工地盤


本施工は,三井物産環境基金「東日本大震災復興活動助成」によって実施されたことを付記し,謝意を表します.