津波堆積物の再資源化による人工地盤造成
仙台市若林区藤塚の農地における試験施工


仙台市若林区藤塚は肥沃な田園地帯でしたが,3月11日の大震災により,広い範囲で津波をかぶる被害を受け,農地の上に大量のガレキや津波堆積物が堆積する大災害となり,塩害や硫化物による作物障害が懸念されていました.そこで,津波堆積物を防潮堤などの人工地盤材料として再利用することで,塩害と津波対策としての【復興まちづくり】を提案するため,仙台市若林区藤塚の農地に堆積した津波堆積物に繊維質固化処理土工法(ボンテラン工法)を適用し,人工地盤(防潮堤)を造成する試験施工を2011年9月5日〜9日に実施しました.

室内試験
室内試験の目的は,試験施工の際の古紙破砕物およびセメント系固化材の配合量を決定することです.配合量決定のための室内試験は一軸圧縮試験とし,改良土の強度および破壊ひずみについて改良目標を,強度100kN/m2以上,破壊ひずみ5%以上と設定しました.
津波堆積物は乾燥して含水比が低いため,40%になるように加水調整し,室内試験を実施しました.室内試験の結果より,これらの目標値を満足する添加量として,古紙破砕物25kg/m3,セメント系固化材64kg/m3と決定しました.

試験施工概要
本施工では,キャタピラージャパン社の協力を得て,情報化施工のためのブルドーザーおよびトロンメル(分級機)をお借りし,施工を行いました.試験施工の面積は約3,000m2であり,図-1に示す情報化施工対応のブルドーザを用いて約15cmの厚さで津波堆積物を剥ぎ取り,約450m3の津波堆積物を得ました.剥ぎ取った津波堆積物の中には,木くず,瓦の破片など様々なガレキ(ゴミ)が含まれていたため,繊維質固化処理土工法の適用に先立ち,図-2に示すトロンメルを用いて分級作業を行いました.


図-1 津波堆積物の剥ぎ取りに用いた
ブルドーザ(キャタピラージャパン社 D3K)

図-2 ガレキの除去に用いたトロンメル

この現場では,ガレキの量は全体の約20%程度であったため,約450m3の8割に相当する約360m3の津波堆積物を繊維質固化処理土工法により改良しました.試験施工では,津波堆積物を所定の量だけ水槽に投入し,含水比が40%になるように加水調整しました.その後,室内試験で決定した配合量を基に,古紙破砕物の添加量が25kg/m3になるように,またセメント固化材の添加量が64kg/m3になるように添加し,撹拌・混合を行い,再資源化処理を施しました.図-3および図-4に古紙破砕物およびセメント系固化材の添加・混合の様子を示します.


図-3 古紙破砕物の添加・混合

図-4 セメント系固化材の添加・混合

改良が終了した土砂はパワーショベルによりピットから排出され,直ちにブルドーザにより敷地の境界まで運ばれ,底面の幅3m,天端の幅1.5m,高さ1mの台形形状の防潮堤の造成に使用されました.図-5にショベルによる改良土の転圧の様子を,また図-6に完成した防潮堤を示します.津波堆積物が約10cmの厚さで堆積し,雑草が覆い茂っていた農地は海岸側に小規模な防潮堤を有する農地に復元されました.


図-5 ブルドーザによる改良土の転圧

図-6 完成した防潮堤

本施工は,三井物産環境基金「東日本大震災復興活動助成」によって実施されたことを付記し,謝意を表します.

また本施工は,下記のメディアに取り上げて頂きました.お礼申し上げます.
NHK山形放送
日本経済新聞
日刊工業新聞
建設新聞
日刊建設新聞
日刊建設通信新聞
読売新聞(左をクリック.Web上に写真が掲載されています)